ニューヨークのYouTubeチャンネルの仕掛け人構成作家・奥田泰が語る芸人YouTubeのホンネ
コロナ禍の影響で最近ではお笑い芸人がYouTubeで独自のお笑いコンテンツを発信しています。そんなムーブメントが生まれる約1年前、お笑いコンビ・ニューヨークは「ニューヨーク Official Channel」を開設。「ニューヨークのニューラジオ」「日本一詳しい芸人名鑑」などの魅力的なお笑いコンテンツを発信してきました。このチャンネルの運営に携わる構成作家の奥田泰さんは、テレビ・ラジオなどでの活動を経て現在はYouTubeの構成作家としても活動されています。奥田さんはYouTubeというメディアで、どのような企画を考えて、コンテンツを発信しているのでしょうか。
—そもそもどのような経緯で構成作家になったのですか。
奥田:昔から芸人さんが出るテレビとラジオが好きだったんです。サラリーマンをやっていて車で営業している時に暇だったので、ナインティナインさんのラジオにハガキを書いてみたら結構読んでくれたんです。ラジオは選ばれた人間が関わる場所だと思っていたから、僕みたいなやつが関われる場所ではないなと思っていましたが、ハガキ職人をやっているうちに自分は面白いんだろうって勘違いするようになってくるんです(笑)。それでラジオ局の前で出待ちして「作家になりたいです」と言ったら他の番組に空きがあって、そこに作家として滑り込んだのが始まりでしたね。
—当時はどのような仕事をやっていたのでしょうか。
奥田:最初はサブ作家をやっていました。ここじゃ言えないようなこととか結構やってきましたね。
—2013年には『オードリーのオールナイトニッポン』、2016年には『ニューヨークのオールナイトニッポン0(ZERO)』)を担当されましたが、それぞれどのようにつかれたのでしょうか。
奥田:オードリーのラジオは、当時ディレクターだった芳樹さん(宗岡芳樹、元ニッポン放送勤務)がネタメールのコーナーを強くしたいと声をかけてもらってサブ作家に入りました。メイン作家には青銅さん(藤井青銅、放送作家)がいました。
ニューヨークのラジオは、北山さん(北山拓、フジテレビディレクター)に「奥田さんと芳樹さんの2人で、是非ニューヨークでラジオやってほしいんですよ!」って言っていただいて、彼らのライブを手配してくれたので見に行ったんです。ライブの後、ニューヨークと一緒に食事をしたり居酒屋で飲んだりして、ライブも話も面白かったので、僕の方もニューヨークと仕事がしたいと思って単発でANNをやらせてもらいました。
—2016年から2017年にかけて『ニューヨークのオールナイトニッポン0(ZERO)』を担当されてから、2年後の2019年からはニューヨークのYouTubeチャンネルを開設されました。どのような経緯だったのでしょうか。
奥田:2018年の年末に彼らからYouTubeでラジオをやりたいって話してきてくれたんです。最初はどういう風にやればいいかみたいな相談から始まったんですけど、だんだんと手伝うことになってYouTubeチャンネルが始まったという感じです。
—ニューヨークの方からラジオをやりたいと打診が来たんですね。
奥田:彼らにも波がもちろんあるじゃないですか。面白かったし数字も良かったのにオールナイトが終わって、無限大のピラミッドからも落とされていて、思い悩んでいたんでしょうね。でもYouTubeでラジオだけやってもお金にならないし、客も増えていかないと思ったので、YouTubeをやるならラジオ以外の動画も出そうということになりました。
—チャンネルを開設した当初は「歌ってみた」などの動画を挙げられていますよね。どのような動画が伸びるか試行錯誤する段階だったのでしょうか。
奥田:最初に作家のチェ・ひろしとは、一年間はどれだけ儲からなくても続けようと話していました。結構厳しい戦いになると思っていましたね。結局、僕らもYouTubeを甘くみていたところも多少あって、乳首とかパンツとかそういう類の動画をあげたり、堂本剛のモノマネをして歌ってみた動画とかを上げていましたが、全然数字が伸びなかったですね。芸人がやるんだから絶対に面白いと思っていたのですが、全然違うんだなとは思いました。
—YouTube上で企画を考える上で大事にしていることはありますか。
奥田:バズるためにやろうとする企画はやめました。ニューヨークが面白くて結果的にバズる分にはいいですが、バズるためってダサいじゃないですか。ただ、面白いことをして見てもらうことを意識しています。
—ニューヨークのYouTubeチャンネルを動かしていく上で、かっこいい・ダサいという価値観を大事にされていますよね。最後に、奥田さんの、かっこいい・ダサいの基準を教えてください。
奥田:えーと、いやあなんだろうな…。まず、YouTubeでお金儲けとかに走る人とか、そういう人がやっていることそのものをダサいとはまったく思っていないんですよ。生きていくためにここで一旗あげてやるぜっていう意気込みで、YouTuber側にグッと寄せて活動するのは生き様としてはダサくないしかっこいいと思うんですよね。それって男じゃないですか。でも、中途半端にすぐやらせと分かるようなことをするのはダサいと思っています。仕事だと思えばやれるんだろうけど、難しいですね。
—芸人であることがまず前提にあると。
奥田:YouTube畑の人たちは、もちろんYouTubeという媒体でお金を儲ける天才だと思いますよ。でも、その中には、手段を選ばない人だっているわけですよ。でも、芸人は面白いものを届けたいという思いが根底にあるからやらせみたいなことをやらないと思うんです。僕らも金稼ぎが目的というのは間違いないですが、ニューヨークがYouTubeという箱の中でやって面白くなるもの、自分たちが面白いと思えるものであることを前提にして企画を考えています。
—ラジオ局でやるラジオとYouTubeのラジオの違いはありますか。
奥田:ラジオ局のスタジオの設備はすごいなあと思いますね。ニッポン放送のマイクはすごく性能がいいですし、スタジオで音も反響しないんですよ。でもそれ以外はあまり違いはないのかなと思います。
—例えば、YouTubeのラジオは喋っているブースが丸見えなのは大きな違いではないでしょうか。普段のラジオでは映らない作家の方の姿も見えていますし、奥田さんもラジオ上で声を発するというのも新鮮さを感じています。
奥田:彼らがラジオっぽいラジオをやりたいと言っていたからなんですよ。だからジングルも入れたいし、タイトルコールもしたい、テーマも入れたいし、CM代わりの映像も入れたい。そうやってラジオのフォーマットに近づけると、作家は演者の横にいるから結果的に僕が映るだけのことなんですよ。普通のラジオは喋っている様子は基本的に見えないから、指示出しする時は筆談でやりとりしますが、YouTubeの方はもはや様子が見えてしまうから、書いて指示出しするのも意味がないので喋る時があるという感じです。
—ニューヨークのYouTubeチャンネルの今後の目標を教えてください。
奥田:今までとあまり変わらないですね。登録者が10万人突破した時にYouTubeチャンネルの今後についてみんなで話をしたんですけど、やっぱりなめられたくないなっていうのがあったんですよね。あくまで、自分たちが面白いと思うものを作っていこうというスタンスで、結果は後からついてきたらいいなという感じです。
—自分たちが面白いと思うことを変わらずにやり続けると。
奥田:そうですね。数字はあまり気にせずやっていければいいなと思ってます。まああとは、この前にゆにばーすの川瀬名人が「下手な深夜番組に出るよりニューヨークチャンネルに出た方が得だ」とツイートしてくれてて、すごくうれしかったですね。おこがましいとは思いますが、他の芸人さんにとってニューヨークのYouTubeチャンネルがプラスになってくれればいいなと思います。
取材・文 渡辺涼雅
ニューヨークのYouTubeチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/channel/UCS17iKEInkBuHkxtEcCnTTQ