学生生活の第3の選択肢—10°CAFEで実現できる主体的な働き方
高田馬場・神田川沿いに構えるカフェショップ・10°CAFEは、「ヒト・モノ・情報との出会い 人生がほんのちょっと変わるきっかけが見つかるお店」というコンセプトの元で経営されている。実はこのお店は、人事から広報、接客、メニュー作りから経理まで全てを学生が運営している。私たちはサークルやアルバイトだけを学生の活動の選択肢として認識してしまいがちだが、対人関係がフラットな環境でカフェの経営に主体的に取り組める10°CAFEは、間違いなくサークルでもアルバイトでもない、学生の活動における”第3の選択肢”だ。そして今春も新たなスタッフを募集するそうだ。10°CAFE店長の井上葵唯さんに学生によるカフェ経営の実態を伺う。
—井上さんが10°CAFEで働くようになったきっかけを教えてください。
井上葵唯(以下、井上):もともとカフェが好きで、大学の近くとか通学途中にあるカフェによく通っていたんです。大学に入ってからはコーヒーチェーン店でアルバイトも始めました。自分が実際に行ったお店で見つけた素敵なサービスをお店に反映できたらなと思っていたのですが、チェーン店には厳密なマニュアルがあるし、当然アルバイトに裁量権もない。だから能動的に働くことが難しい環境だなあと実感しました。そんなときに大学2年の秋ごろに10°CAFEに来店して、何気なく10°CAFEのホームページを見たら、どうやら学生が主体となって経営しているぞと。10°CAFEなら私のやりたいことができると確信して、すぐに働くことを決めて応募フォームを送りました。
—学生経営ということですが、具体的にはどのように組織を運営しているのですか。
井上:店長が全体を取り仕切る形で、ホールやキッチンといった現場色の強いシフト業務と人事や広報、マーケティングなどの部門が集まったチーム業務から組織されています。チーム業務の中にはメニューを開発する部門や売上分析をする部門もあります。また、10°CAFEの3階ではレンタルスペースを設けており、その運営チームもあります。
—会社のように、部門ごとに組織されているのですね。
井上:部門ごとに組織されているので、ある意味ではカフェそのものにあまり興味がないスタッフもいるんですよ。プログラミングに強いスタッフがレンタルスペースの予約フォームを構築してくれるし、お店で実際にマーケティングをやりたいという意欲のあるスタッフもいます。私たちの組織は様々な方向を向いているスタッフたちのおかげで回っています。自分のやってみたいことがカフェそのものと直接関係なくても、部門ごとの運営を通してカフェとつながるんです。
—学生が主体となって運営できることにどのようなメリットがありますか。
井上:自分のやりたいと思ったアイデアを形にするスピード感だと思います。この前だと、メニュー表をブック型からバインダー型に変更しました。私が以前訪れた喫茶店のメニュー表が素敵だったんです。ほどよく紙が風化していて、手書きの文字が読めるか読めないかくらいにかすれていて味わい深い雰囲気がいいなと思いました。その味を醸し出していくために、あえて痛みやすい紙にして、使っていくうちに紙の角が丸くなったりよれていくようにバインダー型にしました。
—個人で発見したアイデアを実際にお店に反映できるのですね。
井上:もちろん好き勝手に施策を打ってしまうと、経営は成り立ちませんし、学生同士で運営しているためブレーキが効かなくなる可能性もあるかもしれません。ですが、10゜CAFEではいい意味で上下を気にしないフラットな関係がスタッフ間にあります。そうした関係性がしっかりとした運営上のルール作りにつながっていると思います。学年やスタッフ歴もバラバラですし、強みもそれぞれです。そうしたお互いの強みを発揮できる環境ができていると私は思っています。
—10°CAFEの今後の目標はありますか。
井上:私が店長になったときに「時の経過に感動を」という経営理念を掲げました。ご来店されたお客様に10°CAFEで時間を過ごすことに居心地の良さを感じていただきたいという思いからつけました。これからも学生経営という冠ありきで運営していくのではなく、私たちが提供するカフェという空間やコンセプトで純粋に勝負していきたいと思っています。
—最後に、今春もスタッフを募集すると伺っています。
井上:指示をされて動くだけのことが多い大半のアルバイトではなく、自分から考えて行動していきながらカフェを経営することはどこでもできるものではないと思います。またサークルやNPOに入って活動することが、まずは学生生活の選択肢に入ってくると思いますが、どちらでも経験できないことが10°カフェで学べると思うので、ぜひカフェに興味があるかどうかに関わらず一緒に運営しませんか。
取材/中村健太郎 文/伊藤拓海